二十四節気にあわせて、塩芳軒の御菓子をご紹介いたします。繊細で豊かな和菓子から、うつろいゆく日本の季節をお愉しみください。
Daikan
萌し
きんとん、白餡
薬にもなるともいわれる「寒の水」。「わきあふれ 流れゆくなり 寒の水」(山口青邨)日は少し長くなり、雪の下では草木は芽ぐみ、水が動き始めているようです。厳寒の中でも春の萌しを感じると、心だけでもあたたかな気持ちになれそうです。
Shokan
あけぼの
こなし、紅餡・オブラート
凛とした空気に包まれる朝。山の向こうから零れる日の光が、町中に降りそそいでいるよう。「新しき 年のはじめにおもふこと ひとつ心に つとめて行かな」(斎藤茂吉)思いの叶う、みのり多い年でありますように。
Toji
冬の香
上用、こし餡・柚子
冬になると出会う、石油ストーブ、柚子、蜜柑…どこか懐かしい匂い。温もりを感じるその空間は郷愁の世界へ誘っているようです。「いそがしく 時の動く 師走哉」(正岡子規)慌ただしく過ぎる師走。柚子湯で束の間の休息はいかがでしょう。
Taisetsu
冬の朝
羽二重、白餡
凩にキラキラと舞い落ちた木の葉。枯れてゆく木々のそばで、雪のように白い花をつける庭の椿。日に日に深まる冬をどこか清らかに見せてくれます。北風がもうひと吹きすると、雪のたよりも聞こえてきそうです。
Shosetsu
不香の花
もちきび、こし餡・氷餅
秋を彩った黄葉や照葉は、その色さえも木枯らしに吹き消されたよう。「時雨かと ねざめの床に きこゆるは 嵐に堪へぬ 木の葉なりけり」(西行)その乾いた風は時雨をほのかに雪へと変えて行きます。心も温めてくれる陽だまりがうれしい、雪の季節が始まります。
Ritto
秋なごり
きんとん、粒餡
やさしい若葉色に始まり、様々な緑の色を楽しませてくれた木々。気がつけば黄や紅、橙と、冬の眠りの前に美しい彩りを魅せてくれます。「もみぢ葉の 流れてとまる水門には 紅深き波や立つらん」(素性法師)冬色に染まるまで、もう少し秋の名残を楽しめそうです。
Soko
山路
村雨、こし餡・栗
時折降る時雨、秋のいろどりを待つ小径の草花。しっとりと佇む姿は、晩秋のはじまりを教えてくれているようです。「村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ」(寂蓮法師)森閑とした山路からの情景もまた秋の趣の一つでしょう。
Kanro
まさり草
ういろう、白餡・こなし
優草、齢草、千代見草、翁草……。多くの名を持つ菊。「久方の 雲の上にて見る菊は 天の星とぞ あやまたれける」(藤原敏行)古くから愛されている菊。葉につく露は不老長寿の霊薬とも。菊晴れの清々しい青空をバックに、彩り豊かな季節が始まりますね。
Shubun
山づと
こなし、丹波栗・羊羹
一雨ごとに秋が深くなり、朝夕は寒ささえ感じます。「はらはらと 落つる木の葉に まじりきて 栗の実ひとり 土に声あり」(蓮月)耳を澄ませると、秋の音も聞こえてきそうです。さわやかな秋日。如何に過ごしましょうか。
Hakuro
菊の風
鹿の子、白餡
夏の暑さを忘れさせてくれる、秋の涼風。草花は風に揺れるたび、秋の装いに変わっていきます。「早く咲け 九日も近し 菊の花」(芭蕉)9月9日、重陽。長寿を願い、菊酒などいかがでしょうか。
Shosho
夕とんぼ
ふのやき、白餡
夏を忘れさせる、夕暮れの風。見上げると茜色に染められた絹のような秋の雲が、何だか懐かしい気持ちにしてくれます。「とどまれば あたりにふゆる 蜻蛉かな」(汀女)あの夏の青い空……もう昔のことのようです。
Risshu
秋すだれ
錦玉、白あん
簾の向こうはまだ夏の盛り。蝉しぐれが夏の思い出に変わるのはいつになるのでしょう。「君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く」(額田王)秋の気配は感じても、本当の秋はまだ遠いようです。
Taisho
待宵草
羽二重、白あん
梅雨が明け、空を見上げると、青と白のコントラスト。暑さの本番が始まります。夕暮れを待って咲き始める「待宵草」。涼を求める気持ちは皆、同じなのでしょうか?
宵の夏
葛、黒糖、こし餡
夕涼み、川涼み、舟涼み……そして、宵涼み。暑さを忘れさせてくれる、夜空の星。「竹深樹密蟲鳴處 時有微涼不是風」(漢詩「夏夜追涼」より)虫の音もまた、涼を呼んでくれるようです。
Geshi
半化粧
ういろう、白餡
雨音をBGMに、夏の装いを始める「半夏生」。今年も半分が過ぎようとしています。「水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命 延ぶと言ふなり」(拾遺集より)夏越しに「みなづき」はいかがでしょうか。
Boushu
梅雨空
きんとん、こし餡
すみずみまでを潤してくれる、梅の雨。町をしっとりと深い色に変えていきます。「梅雨晴れて 水無月の風 窓に吹く」(子規)心も晴れる、陽の光。日陰の爽風も心地よい季節です。
Shoman
麦の秋
こなし、こし餡、ゴマ
麦畑が太陽の光を浴びながら、美しく輝きはじめるころ。夏を運ぶ風は、その穂をゆらし、乾いたやさしい音を聞かせてくれます。「麦の秋 あからあからと 日はくれぬ」(子規)やはり「秋」には夕日が似合うようです
Rikka
青時雨
葛、白餡
さわやかな新緑の季節。青葉雨が降るごと、衣装を変えているかのように、うつろう木々の色。若葉色を背景に咲く、菖蒲、杜若、藤、葵……。伝統色に名をつらねる花たちが、初夏を優雅に彩ります。
Kokuu
花空木
きんとん、白餡、白小豆
清々しい初夏の風を呼ぶ、やわらかな雨の降るころ。旧暦の4月もそろそろ始まります。卯月は「卯の花」が由来とも……。桜につづいて咲く花々。晴れた空に映える新緑の季節も、もうすぐですね。「雪の色を うばひて咲ける うの花に をのゝ里人 冬こもりすな」(藤原公実)
Seimei
春かすみ
上用(おぼろ)、白あん
桜のたよりを聞くと、厳しい冬が遠い昔のことのようです。夢や希望を持って、あらたな気持ちで、一年が始まります。「春霞 たなびく山の 櫻花 見れどもあかぬ 君にもあるかな」(紀友則)素敵な出会いがありますように。
Shunbun
野の春
羽二重・よもぎ、粒餡、きな粉
春の長閑な日。野や丘、川原に出かけて、青々とした草を踏みしめて歩く。体いっぱいに春を感じることができそうです。「春日野の 若菜つみにや白妙の 袖ふりはへて 人のゆくらむ」(紀貫之)
Keichitsu
菫
こなし、こし餡
ゆっくりと冬を過ごした虫たちも、里の山菜も、川辺の花も。春にそっと起こされたようです。「春の野に すみれ摘みにと 来し我そ 野をなつかしみ 一夜寝にける」(山部赤人)野あそび。春のやさしい空気に包まれながら、幼き日を思い出せそうです。
Usui
桜橘
きんとん、粒餡・こなし
待ちどおしい、春のおだやかな日。雛飾りを見ると、少し春が近くなった気がします。「雨水」に雛を飾ると、良縁に恵まれるとも……。「春の雨は いやしき降るに 梅の花 いまだ咲かなく いと若みかも」(大伴家持)
Risshun
光る風
豆まき、鰯、恵方巻……節分から一夜。冷たい風の中にも、そっと顔をのぞかせる春。「音なしに 春こそ来たれ 梅一つ」(黒柳召波)春色に染まるまでには、まだ時間がかかりそうですね。
これまでの和菓子と暦
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